「今度、北海道で結婚式を挙げるから、よかったら来てね!」
そんな明るい声と一緒に手渡された招待状を見た瞬間、私は内心で「ああ、やっぱりか…遠方なんだよな」とため息が漏れた。もちろん、結婚式自体はおめでたい。仲のいい友人を心から祝いたい気持ちはあるけど、どうしても頭をよぎるのは交通費と宿泊費という、地味だけど巨大な問題だ。
「結婚式の招待状」が「金銭地獄への招待状」に変わる
大学時代からの友人が、実家のある北海道で挙式をするという。「絶対来てほしい!」と熱心に言われたのでネットで乗り換え検索やら宿泊先を調べ始めると、なんだか気が滅入ってきた。
- 飛行機代:約3万円
- 電車代やタクシー代などの移動費:約1万円
- 宿泊費、安めのビジネスホテル1泊:約1万円
- ご祝儀3万円との合わせ技で合計8万円……
数えてみればみるほど、「これ結婚式のためにこんなに払うのか」という衝撃がじわじわこみ上げてくる。友人が一番大事な日を迎えるのは分かるけど、“お祝い”という名目でこんな出費が強いられるのかと考えると、冷静さを失いそうになる。
飛行機のチケットを取ろうにも、結婚シーズンや行楽シーズンが被ると片道だけでも相当な金額になる。新幹線を選んでも往復で数万円は下らないし、夜行バスにしても数千円プラス移動時間が長すぎて疲労は半端ない。あれもこれも試算しているうちに、「どれを選んでも高いし、どれを選んでも財布へのダメージエグい…」という泥沼にはまっていく。

「ここまでして出席すべき?」と思うほどの出費
遠方の結婚式は、単に「交通費だけじゃない」のが地味に痛い。たとえば、友人が挙式するのが日曜日なら、前日の土曜に移動→式当日→翌日に帰る…みたいな流れになる。つまり2泊か1泊は確実に必要。連休でもない限り、有給休暇を絡めることになる。お金だけじゃなく、自分の貴重な休日や有休を丸々費やすわけだ。
- 宿泊費は安めのビジネスホテルでも10,000円(金〜土曜なら週末価格でもっと高い!)
→疲れを癒やしたいとなり、もう少しいいホテルを選ぶと1.5万~2.5万円くらい - 朝から式のリハーサルやら受付やら、さらに披露宴→二次会なんて流れだと、体力的にも削られる
「せめて観光がてら楽しもう」と思っても、式が行われる地方都市が“観光地”というわけではない場合もある。そもそも荷物が多いし、服装だってドレスアップやスーツなどを持ち歩くのは面倒。気軽な旅行にするにはハードルが高い。
しかも、結婚式のためにわざわざ前日に飛行機に乗り、当日は早朝から髪のセットに追われ、深夜まで二次会に参加…。次の日の便で帰ってきたころにはクタクタになっていて、心から「これって何の試練?」と叫びたくなる。
「おめでとう」と言いたい気持ちがないわけじゃないけど、出費と疲労に見合うかどうか、正直疑問が湧いてくるのも仕方ないと思う。
「式当日は盛り上がっても、帰り道の虚無感がすごい」
遠方の結婚式に参加すると、当日だけは祝福ムードでなんとかテンションが保てる。「久々に会った友人たちと写真撮ったり、会場の食事を楽しんだり、まあ悪くないかな」と思う瞬間もあるかもしれない。でも問題は、そこからだ。
式が終わってみんなが解散したあと、「うわ、私ここから帰るのに○時間かけないといけないのか…」という現実に直面する。下手すると電車やバスの時間に間に合わなくて、もう一泊しないといけないかもしれない。新幹線の終電が早い地域だと、披露宴や二次会を途中で抜け出す必要もある。
で、朝早く出発して帰路につくと、荷物はかさばるし体は疲れ切ってるし、いざ家に戻ったころには日曜日の夜遅く。翌日は月曜日から仕事。はあ、なんてハードスケジュールなんだ…。
結婚式で感じた楽しさなんて、帰り道の憂鬱と疲労ですっかり吹き飛ぶ。「私、何にこんなお金と体力を注いだんだっけ…?」とむなしさすら感じることもある。
ご祝儀以外にも出費のトラップが潜んでいる
遠方の結婚式には、祝儀や交通費・宿泊費だけで済まない場合もある。たとえば、式の前日に移動して夕飯を食べようとすれば、その食事代もバカにならないし、ヘアメイクを現地で頼むならサロン代もかかる。もしドレスやスーツを新調する必要があるなら、その出費だってあるわけだ。
- 前泊の夕食や朝食代
- レンタカーを使うならガソリン代や駐車場代
- ご祝儀だけじゃなく二次会費用…?
- いちおうお祝いだから友人へちょっとしたプレゼントも用意?
どんどん財布からお金が出ていく感覚は、本当に地味にツライ。「気づいたら○万円使ってる!」なんて事態もあり得るし、クレジットカードの明細を見て青ざめることもしばしば。そこまでして“お祝い”する意義を見いだせないと、内心モヤモヤが止まらない。
「今さら断りづらい」というジレンマ
本当は、招待されたときに「遠方なので厳しいです」と最初から断る方法もある。でも相手が大事な友人やお世話になった先輩だと、どうしても引っかかるんですよね。
「行かないと冷たい人って思われるかも」「せっかく誘ってくれたのに…」っていう罪悪感が芽生えてしまう。
特に、新郎新婦のどちらかが「ぜひ出席してほしい」と直接連絡をくれた場合は、なおさら断りにくい。式の席次表とか、ホテルの手配をしてくれる場合もあるし、「交通費は多少負担するよ」と言われても、実際はどこまで負担してくれるか分からない。結局、断りづらさに負けて出席を決めてしまい、その結果、自分の財布と体力が破壊される流れになるわけだ。
「ごめん、実はそこまで仲良くないんだよ…」と思っても言えない
さらに地味に困るのが、実はそこまで親密な関係でもない相手からの遠方挙式の招待。
大学時代のサークル仲間とか、前職の同僚とか、仲は悪くないけど「結婚式に呼ばれるほど??」と感じる微妙な距離感のパターンも多い。「ちょっと待って、私たちそんなに頻繁に連絡取ってないよね?」と不思議に思うけど、本人が呼びたいなら仕方ない。しかも、呼ぶ側は“地元で挙げる”のが当たり前だから、「遠くから来てもらう負担なんて大したことないでしょ?」くらいに思っている可能性だってある。
こちらとしては、「え、見返りがあるならまだしも、単なる知人レベルに高額の出費と労力をかけるの?」と内心思ってしまう。けれど「行けません」ときっぱり断るのも角が立つかも…と悩んでいるうちに、どんどん出欠の返信期限が迫ってくる。

結果として感じる「モヤモヤ」と「ため息」
こうしてあらためて考えてみると、遠方で挙式されるときの負担は、想像以上に大きい。祝いたい気持ちはあれども、財布とスケジュールが逼迫し、当日の移動で疲れ果て、帰ってきたら残るのは「あーあ、今月はもう何もできないわ」というやるせなさ。
幸せいっぱいの新郎新婦を目の前にすると、さすがに「おめでとう!」と笑顔で声をかけるしかない。もちろん笑顔が嘘ってわけじゃないけれど、その裏には交通費と宿泊費の現実が重くのしかかっている。
後日、別の友人に「この前、○○の式に行ってきたんだけどさ、飛行機代が…ホテル代が…」と愚痴をこぼしたくなるのも当然だと思う。
この苦労を抱えたまま、帰路に着く
遠方の結婚式の最大の敵は、「お金」と「時間」そして「体力」だ。
行きたい気持ちがあっても、そこが足かせになって素直に祝福モードになれない人は多いのではないだろうか。実際、「帰ってくる頃にはクタクタ、財布はスカスカ、せっかくの休日は終わってる…」という結末になりやすい。
「なんでこんなにかかるんだろう」「どうしてもっと近いところでやってくれないんだろう」「やっぱり断ればよかったかも」――そんな思いを抱えながら、遠方挙式に参加したゲストは、重い荷物と心のモヤモヤを抱えて電車や飛行機に揺られて帰るのだ。周りには同じように疲れ切った表情を浮かべる人々がちらほら。これが現実なんだと痛感する。
もちろん、主役である新郎新婦の都合や夢もあるから、全てが悪いわけじゃない。けれど、「遠方で挙げるなら、せめて移動費の負担ぐらい考えてほしい」「祝儀なしでもいいんじゃない?」なんて小さな呟きがこぼれるのも、仕方ないだろう。そう思いつつも言えないのが、結婚式という空気の不思議さだ。
気づけば、家に帰り着くころには日付が変わっている。山のように溜まった洗濯物を片付けながら「…ま、友人の幸せが見れたし、いいか」と自分に言い聞かせる。
心のどこかでは、これが最後の遠方挙式招待になってほしいと願いながら――
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